塾教育研究会(JKK)代表 皆倉宣之
首都圏の塾長たちが中心となって結成されている塾教育研究会(JKK)では、このほど15年振りに「塾教育レポート」の2001年版を刊行した。
会の発足当時、臨教審の中間報告が次々に発表されていたが、そこでの学習塾の捉え方が進学塾と補習塾という極めて一面的で通俗的なものであり、全然学習塾の実態を正確に反映したものではなかった。そこで、臨教審やマスコミや行政への啓蒙を行うために、学習塾の実態を洗い直し、いわゆる地域密着型の中小の学習塾がどのような教育を実践しているかを102のタイプにまとめて、「塾教育レポート」という形で発表したのである。
このレポートから浮かび上がってきた塾教育の特徴は、
(1)子どもや親の要望に応えるために新しいことに取り組む先駆性
(2)それらの様々な要望に直ちに応える即応性
(3)学校のように法令にとらわれない柔軟性
(4)各塾がそれぞれ独自のシステムと教授内容・方法とをもって教育を実践する多様性
という4点であった。そして、これらは今も脈々と生き続け進化しつつある。
しかしながら、その後今日までの15年という年月の経過は、塾教育に対しても大きな変化をもたらしている。すなわち、15年前の塾の授業風景はといえば、どの塾も一クラス10人から30人の一斉授業で、多量の宿題と夜更けまでの居残り勉強、五教科型、月例テスト、成績順位の張りだし、テストごとのクラス替えといった、いわばスパルタ型が主流であった。
ところが、今回では、これらの主要な部分が悉く姿を消し、代わって小人数制、さらには個別指導へ、宿題の縮減と居残りの廃止、単科主義、成績張りだしの廃止といった傾向になりつつある。さらに、DVD、ビデオ、パソコンといった教育機器の導入、NIEや総合的な学習の導入、野外体験活動、不登校児や中途退学者を受け入れるためのフリースクールの開設、インターネットや携帯電話や衛星放送を利用しての遠隔授業の導入等々、塾の個性化・多様化はますます進行しつつある。
しかし、近年階層格差が広がりつつあるといわれるわが国において、機会の平等が不十分な状態で塾が市場主義経済の原理に依拠している以上、結果の不平等を拡大させる危険性のあることに充分な注意を払う必要がある。

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