【第一章】
3.文化審議会答申「文化を大切にする社会の構築について
~一人一人が心豊かに生きる社会を目指して」
【資料 1-3-1】
第1章 今後の社会における文化の機能・役割
5.グローバル化と文化 ~ 世界平和のために
古来,人類は多様な文化を創造し,それらの異なる文化は交流することにより進歩してきました。文化の交流は,それぞれの文化に深さや広さをもたらすものであり,その結果,総体としての人類の文化が発展してきたと言えます。
近年,インターネットの急速な普及などによるグローバル化が進む中で,個人や社会の様々な営みが同質化されることが懸念されています。人々の価値観や思考方法などが多様であることは,個々人の持つ価値観やものの見方,考え方を補完し,一元的な思考が陥る危険を回避するものです。今後世界が共存していくためには,各国,各民族が互いの文化を尊重し,多様な文化を認め合うとともに,文化交流を通じて,国境や言語,民族を超えて,人々の心を結び付けることによって,世界平和の礎を築いていくことが極めて重要です。
文化の交流に当たっては,まず,自らの歴史と伝統を理解し,自己のアイデンティティーを確立しなければなりません。他の文化を理解するためには,自己の文化を知らなければなりませんし,自分という軸がしっかりしていなければ,他の文化を無秩序に受け入れることにもなりかねません。また,自己の文化の持つ良い点を相手に分かりやすく伝えるためにも,自己の文化についての理解を深めることが必要です。こうした中で,他の文化に対する寛容や尊敬の気持ちが育まれます。
また,我が国の文化を支えてきた母語としての日本語を大切にし,継承・発展させていくことは極めて重要です。グローバル化が進む中で外国語の能力を身に付けることの重要性が言われていますが,そのためにも,まず,母語で自分の意思を明確に表現できる言語能力を涵養する必要があります。
【資料 1-3-2】
第2章 文化を大切にする社会を構築するために
2.文化を大切にする心を育てる
(4)国語の重視
言葉は,コミュニケーションの手段であると同時に,その言葉を母語とする人々の文化と深く結び付いており,文化を伝えるものです。このような,文化の基盤としての国語の重要性にかんがみ,学校教育においては,国語教育が質量ともに十分に行われるよう努めていくことが求められます。その際,古典の積極的な取り入れ,名文や優れた詩歌の素読・暗唱・朗読,読書や作文などの指導法の工夫・改善に取り組むことが求められます。
また,学校教育に携わるすべての教員が,国語についての意識を高め,それを実際に生かしていくことが重要であり,教員の養成段階や,研修において,国語に関する知識や運用能力を向上させていくための配慮が求められます。
さらに,国語に関する研究を振興するとともに,言葉に関するシンポジウムの開催などにより,地域や家庭など,日常生活の中で自分自身の考えを,相手や場面に応じた適切な言葉で伝えようとする意識の高揚を図ることも必要です。
永い歴史の中で築かれてきた国語の特色ある表現や豊かさは,これからも大切にされ,一層磨かれていかなければなりません。地方の伝統文化や地域社会の豊かな人間関係を担う多様な方言についても,引き続き尊重され,継承されていくことが望まれます。近年,問題になっている外来語・外国語(いわゆる片仮名言葉)の氾濫(はんらん)は,社会における情報伝達の妨げとなるのみならず,伝統的な国語の良さを損なうおそれがあります。特に,官公庁や報道機関などにおいては,片仮名言葉を安易に用いることなく,個々の言葉の使用を吟味して,できるだけ分かりやすい言葉に言い換えたり,必要に応じて注釈を付けたりするなどの配慮が必要です。また,近年の情報機器の発達・普及にかんがみ,漢字の使用についての再検討も併せて求められます。
なお,テレビ・ラジオ等の放送,新聞・雑誌等の出版物など,様々な媒体が人々の言語生活に及ぼしている影響は言うまでもなく大きく,関係者においては,このことを十分に認識して行動することが強く期待されます。