「ホフマン/フィッシャー ふたりの絵本原画展」
4月6日金曜日。1日に開館したばかりの千葉市中央図書館を覗きに行きました。お目当ては、「ホフマン/フィッシャー ふたりの絵本原画展」でした。「おおかみと七ひきのこやぎ」や「ながいかみのラプンツェル」などで有名な絵本画家=フェリックス・ホフマンと、「長ぐつをはいたねこ」や「こねこのピッチ」などで有名な絵本画家=ハンス・フィッシャーという、二人のスイス出身の絵本画家の絵本原画展です。
ハプニング
どの原画も絵本で読んだ絵が先に頭の中に入っているので、あたかも絵本を見るようなつもりで「うんうん、そうだそうだ……」と言った調子で、しかし絵が大きいいだけに「迫力があるなあ……」と感じたり、また「これが本物なのだ……」とある種尊敬の眼差しを抱いたりしながら、1枚の絵も見逃すことなくじっくりと鑑賞していきました。ただ、1周目のときに「何か変だな」という直感みたいなものを感じた絵があったのです。それは、ホフマンの「ながいかみのラプンツェル」の原画13枚中の「搭の窓から歌うラプンツェル」(カタログの46番)の絵でした。そして、ハプニングはおきたのでした。
鏡に映る絵
くり返し見てもどうもわたしの記憶の中の絵(絵本で見た絵)と逆(鏡に映るとおなじように、左右が逆)なのです(断定!)。実はこの絵本は、娘が幼かったころ殊更にお気に入りで、100回ぐらいは読んでやったほどの馴染み深いものだったのです。それゆえにでしょうか、結果論になりますがかなりわたしの頭の中に強烈な記憶として焼きついていたのでしょう。
推測
早速そこに置いてあった福音館書店の絵本(せた ていじ訳)をめくると、まさに原画と絵本の絵とは逆に印刷されているのです。最初は、「そんなことはなかろう。もしそうならもうとっくに誰かが気付いて指摘されているはず。だからわたしの目の錯覚だろう。」と、自分で自分を納得させようと必至に努力していたのです。にもかかわらず「でも、でも……なにか吹っ切れないなあ~」との思いはますます募るばかりでした(^0^*。
(わたしの推測では、福音館書店が印刷する時に「原画」の裏と表を逆にしてしまったに違いないというものでした。しかし、あとで聞いたところでは、福音館書店は原画を印刷したものをそのまま使用するのみなので、わたしの推測は成り立たないことがわかりました)。
調査
そこで、思いきって館員の係りの方にその旨をお尋ねしたのです。そしたら責任者の方が見えて、「ああ、そうですね。こんなことには全く気づきませんでした。うっかりしていました。あとで調査してご連絡いたします」とのことでその日は終わったのです。
あっけない結論
数日して図書館からお電話をいただきました。絵本図書館の館長さんのお話として「これは、リトグラフなので、原画を作成する時に作者のホフマンが裏と表を逆に刷ってしまったか、絵本に刷る時に逆にしてしまったかのどちらかだろう」と言った内容のことでした。
あっけないような、また常識的な結論ですが、それにしても、スイスやヨーロッパでは、この原画と絵本とのズレについて何も問題になったことはないのでしょうか。
(01/05/30)
[本稿は「千葉市の図書館を考える会」の機関誌「図書館を考える」のために書かれたものです]