つい先日のこと、JR総武線・新検見川駅の改札口で面白い光景を目撃した。
朝のラッシュを過ぎた時刻に、理知的な顔をした壮年の男性が、いまはやりのスイカとかいうカード状のものを改札機の画面にタッチして、さっそうと通過しようとした。
ところが、ピッピッピッピー ピッピッピッピー と機械が鳴り響きだした。その男性は、ちょっと慌てたようであったが、そこは持ち前の冷静さゆえか、平然として隣の改札機でやり直しを始めた。多分1台目の改札機は故障中と判断してのことと推察された。
ところが、2台目の改札機もピッピッピッピー ピッピッピッピー と鳴り出した。
これには冷静さがうりものの男性もさすがに感情が高ぶってきたらしく、機械をあきらめて、監視している駅員を見つけると、そちらの方へと足を向けた。
「改札機が僕を通さないのですが、故障中なのですか」と、さすがに高校3年生の英語の授業でもしているのであろうか、英語特有の無生物主語を用いて冷静に駅員に尋ねた。
「いいえ。カードを見せてください」。待ってましたとばかりに、その男性はやや緑がかったカードを駅員に見せた。
「ああ~、これは違うカードです」。その瞬間、その男性の中の何かが崩れてゆくのを私は感じた。
後日伝え聞いたところによると、この男性は緑がかった郵便局のカードをスイカと間違えて使用してしまったらしい。10数枚のカードを同じ入れ物に突っ込んでおくことが、混乱を引き起こすもとか。
それを見かねた娘が「父の日」を繰り上げて、定期券入れなるものをプレゼントしてくれた、というおまけ話もあるそうな。
ちなみに、この男性は、数年前、富士銀行で通帳を使って入金しようとしたとき、その通帳を機械が受け付けてくれないので、係員に文句をいったら、その通帳は住友銀行の通帳だったらしい、というエピソードの持ち主でもある(やはり通帳の色が似通っていたためらしい。しかも、娘の目の前で。恥をかいたのは娘か本人か?)。
それにしても、兼好法師がこの様をご覧になったら、この男性をなんとお諭しなさることでしょう。「ことがしょうじたらば まずはおのれをかえりみよ」か?
大いに反省したい。