塾教育研究会(JKK)代表 皆倉宣之

先日、東大大学院教育学研究科・教育創発機構(機構長・苅谷剛彦教授)が主催する「学校と塾の関係を問う」という公開研究会が本郷の東大で行われた。発表者は、塾経営者、元公立中学校長、韓国人の上智学院(日本の塾にあたる)経営者、アメリカ人によるアメリカの塾事情、大学教授の五人で、ほかに指定討論者として二名の大学教授と多彩であった。
実は本研究会は二回目であり、苅谷教授をはじめとする教育社会学者たちが、現実としては存在しながらなかなか分析対象としては取り上げられてこなかった学校と塾の関係に、真正面から取り組んでみようという意気込みが感じられる催しであった。
今回の研究会開催の趣意書によれば、学校と塾の関係を現象面としては「日本は、世界においても、学校教育の外での塾通いが多く、“二重に”勉強している子どもが多い国の一つとして知られている。
こうした学校外での組織的な学習指導は、英語でシャドーエデュケーション(影の教育)などと呼ばれてきたが、場合によっては学校でリラックスして塾で勉強する「影」が表になるような現象が見られたり、同時に、「影」と表との新しい関係が模索されたり、両者もまたそれぞれに変化したりなどの動きが見られる」と捉え、それゆえに、「塾、学校など、それぞれの異なる立場から具体的に子どもの学習状況に関して何が言えるのか、相互にどのような関係が築かれているのか、今後どうすべきかが課題となり、それを議論していく」ことの必要性が求められることになる。
塾に携わっている私として、この問題認識は極めて重要であると考えているが、もっと緊急を要する課題があると考える。それは、学力低下論争を機に自治体や親たちの塾への期待が高まる傾向も見受けられるが、他方では経済的に塾へ通えない子どもたちが増えており、その結果ますます学力の二極化が進行しつつあることである。塾の存在が、経済の格差を学力の格差へと転化する役割をはたしているとしたら、これは単なる自由競争(または自己責任)の原理で済まされる問題ではないだろう。塾を禁止できないとすれば、あとはバウチャー制の導入などで何とかするしかないのかも知れない。

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