‘03 国語力について’ 一覧

【第三章】3.本法案をどう評価するか
2004-02-15

先に少し触れたように、本法案は文字・活字文化の振興の推進を目的とするものであり、表面的には多少の文言に違和感のあるところを除けば、それほど異論はないかもしれない。
しかしながら、ここで簡単に述べておくと以下のような問題点が指摘される。
先ず、読書というまさに個人に属する領域に国家や公共団体がどの程度の関与が許されるかである。この点は、「子どもの読書活動の推進に関する法律」ができた際にも問題とされた。
次に、文字・活字を利用する側と文字・活字を供給する側とのバランスをどうとれるかである。出版業界というまとまりのある団体の力は、読む側の個人のそれよりもはるかに強い。それゆえに、本案では削除されたけれども、骨子案にあった「版面権」(出版者の固有の権利)の創設などという出版業界にとっての利益を優先する思考が増殖しないことを要望しておきたい。
第3に、学術的出版物の普及の支援が規定されているが、「学術的」であるかないかの基準を誰がどのようにして決定するのか、読者か出版社か行政か、は大問題である。検閲となりかねない側面もあることを注意しておかなければならない。
最後に、この法律と他の関連法律との関係、すなわち一般法と特別法、前法と後法、あるいは上位法と下位法といった関係はどうなるのかということである。図書館法や学校教育法、学校図書館法、それに指導要領などとの関係である。
特に、図書館に関する基本法である図書館法と本法案との関係は重大で、後法は前法に優先するという立法の原則からすれば、図書館法が骨抜きにされる可能性すらあり得る。たとえば、図書館法が掲げるいろいろな自由と、先に述べた「学術的」かどうかの判断の際にどちらを優先させるのかとか、「文字・活字文化振興法の施行に伴う施策の展開」が掲げる「地域における文字・活字文化の振興」にあげられている項目などは、本来図書館の任務と思われるものが多いが、それを本法案は奪ってしまうのではないかという疑問を感じる

【第三章】2.いま、なぜ、本法案が浮上したのか~その背景は?
2004-02-14

去る2005年3月31日の活字議連の総会で、次のようなやり取りが議員の間で行われた。
「公立の図書館がない市町村もある。法律を作ることで、どういう施策を推し進められるのか。国民全体で活字文化を大事にしよう」(前文科大臣・河村健夫氏)
「年末に発表されたOECDの調査結果は衝撃的なニュースであった。文字文化、活字文化、読解力、表現力は人間としての基本だ」(鈴木恒夫氏=自民)
「日本の将来を危ぶむ声の多いのは、活字文化への危機感と表裏一体だ」(山岡賢次氏=民主)
ここからもわかるとおり、議員たちの心理には巷に流布されている国民の活字離れといわれている事態に対する漠然とした危機感と、OECDの国際学力到達度調査(PISA)結果で読解力が14位に下がったという具体的な事実からくる切迫感とが混合している。しかも、これが加速すると日本文化の衰退を招き、さらには、ここが特に保守の側から強調されるところであるが、文化と「伝統」は表裏一体の関係にあり、伝統が忘れ去られてしまうかもしれないという、まさに日本のアイデンティティの危機という認識も影響しているようだ。
とはいえ、日ごろの議員たちの活動をみていると、こういう認識が沸々と湧いてくるとは一般的には考えにくい。やはり、背後に仕掛け人がいるはずである。
その仕掛け人こそ02年10月に結成された「活字文化推進会議」(事務局 読売新聞社内)という団体である。国民の活字離れを懸念し、それを防ぐための具体策の必要性を説いている。その音頭をとっているのが読売新聞社であり、他の出版業界や作家、知識人らに呼びかけて会の結成にこぎつけたという次第(どういうわけか、朝日、毎日など他紙はこの法案についての記事をほとんど取上げてこなかったが、そのわけがここらにあったのでは?)。
活字離れは何も書物に限られたことではなく、新聞も同様である。アメリカから日本にも伝わってきたNIE(Newspaper In Education)運動も、市民の新聞離れを防ぐためには、小中高生のときから新聞に親しんでもらうという新聞業界の思惑がある。出版業界も全く同様である。そして、活字離れが読解力の低下と結びつけられると、ストレートに教育問題となる。本法案の基本理念の中に「学校教育においては、読む力及び書く力並びにこれらの力を基礎とする言語に関する能力(=言語能力)の涵養に十分配慮されなければならない」とあるのは、このことを具現しているといってよい。
このようにみてくると、本法案の狙いが文字・活字文化の振興という普遍的で崇高な目的と理念を有しながら、他方では新聞を含めた出版業界の振興という思惑をも有していることを否定できない。もちろん、文字・活字文化の振興には出版業界の振興も必要であろうことは理解できるし、原則論としては正しい。しかし、法案の中身によっては、後者が一人歩きをはじめ、前者は単なる理念に終わってしまう(たとえば、財政の裏づけがなされないといった具合に)という虞がないとはいえない

【第三章】1.本法案を推進している「活字文化議員連盟」とは
2004-02-13

活字文化議員連盟は1996年12月、著作物の再販売価格維持制度の存続を目的として「活字文化議員懇談会」準備会として発足した。その後、97年:学校図書館法改正(司書教諭を12学級以上の全校に配置する)、99年:衆参両議院で2000年を「子ども読書年」とする決議の採択、01年:子どもの読書活動の推進に関する法律の制定、などの成立に大きな影響力を発揮した。
その後、後述する「「活字文化推進会議」と連動する組織として、03年7月に「活字文化議員連盟」に改組され現在にいたっている。
同連盟は現在、超党派の国会議員284人で構成され、代表幹事に、河村健夫、中川昭一、二階俊博、鈴木恒夫(以上自民)、羽田孜、山岡賢次(以上民主)、冬柴鉄三(公明)、石井郁子(共産)、横光克彦(社民)、中野寛成(無所属)、事務局長に肥田美代子(民主)という役員構成になっている。
憲法や教育(教育基本法の変更など)をめぐっては、各党派が鋭く対立しているが、この法案をめぐってはいまどき珍しくまさに超党派の組織である。全会一致というのは民主主義のルールからすればそこそこ喜ばしいことではあるが、なぜ?という興味も湧いてくる

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