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4.民間教育産業と公教育の市場化

1)再編が進む大手学習塾

これまで学習塾を中心として公教育との関連を述べてきたが、一般国民にはそれほど気づかれていない塾以外の民間教育産業と公教育との問題点を探ってゆきたい。

激化する学習塾間のシェア争い」の項で触れたように、中堅塾や大手塾を巡っての巨大な予備校や民間教育産業によるS&Bは、年々激しくなっている。東進ハイスクールによる四谷大塚、代ゼミによるサピックスの買収などがその代表例である。

ではいまなぜこのような買収・合併が起きているのだろうか。それは、少子化による塾生の減少を食い止めるためである。とはいっても、なぜ高校生や浪人生を相手の予備校が小中学生相手の塾を傘下に収めるのか。それは、小中高生の一貫した支配を狙っているからである。小学生を塾で押さえれば、中高と大学受験までの流れを予備校が押さえることができるからである。ここには、小学生をも自分の予備校で青田買いしたいというしたたかな計算がある。

2)大学への進出

次に、予備校による大学への進出である。

カリキュラムの作成を手伝ったり、講師を派遣して授業に入り込んだり、極め付きは大学入試問題の作成を引き受けるといったことまで行っている。

だからといって、予備校が悪いわけではない。そのようなニーズを作り出している大学の側こそ糾弾されるべきである。なぜなら、多額の補助金を国からもらいながら、大学設置の目的を自ら実現できない無能力こそ責められるべきだからである。

かくして、公教育であるべき大学へも民間教育産業が入り込み、私教育が公教育を駆逐してゆく現象が生じている。

3)教育巨大企業「ベネッセ」

民間教育産業といっても、予備校以外ではベネッセ、学研、Z会、内田洋行などが挙げられるが、これらは予備校や塾のように直接生徒たちを教えるというスタイルではなく、通信添削や教育機器の販売といった分野でシェアを伸ばしている。中でも、ベネッセと内田洋行の名を高めたのは、全国学力テストの採点業務をこの二社が請け負ったことである。

これらの中でも、その規模と質の両面において圧倒的に力の大きいのがベネッセである。

「進研ゼミ」という添削指導は、全国津々浦々の小中高生にまで行き渡っている。それに要する費用が塾や予備校の授業料の数分の一で足りるというメリットが、人気を呼んでいる秘密の一つと言われているが、そこにはわが国の教育に投資する自己負担の高さを緩和するという効果も見受けられるのではないだろうか。塾・予備校&ベネッセという時代がくるかも知れない。

4)学校で堂々と収集される個人情報

ところで、ベネッセといえば先に触れた「全国学力テスト」を受託することにおいて、公教育への参入の大きな足がかかりを掴んだと言われている。それは、テストの採点およびその分析、そしてテストに関連する生徒状況調査等のデータを独占できたからである。これらのデータの中には日本全国の小六生と中三生の個人情報が詰まっており、それを毎年繰り返せば高校生や大学生までの一貫した情報を手に入れることができ、それを使っての諸々の事業が可能となり得る。現に模擬テスト問題を作成し全国各地の学校現場へ売り込んでいるとの情報もある。

このことは、民間企業が国の重要な教育の中身にまで参入しているということであり、市場化を通じた公教育の縮小ないしは民営化へと移行することを意味している。

以上のほかに、ベネッセは高校での大学受験指導で圧倒的な強さを見せている。開成や灘高といった上位校は別だろうが、その他の中堅校を中心とした大多数の日本の公私立高校へ入り込んでいる。その要因は、高校内での模擬試験のデータを利用したその後の手厚いアフターケアにある。それが実施した高校側の信頼を獲得している。通信添削と併用した模試は、高校と言う公的教育機関を利用しているだけに、生徒たちへの影響も大きい。

模試と同時に行われる生徒個人への諸々のアンケート調査は、個人情報満載である。生徒たちの個人情報が私企業によって公教育の現場で堂々と収集されるということ自体が、許されることではあるまい。これは予備校の学校内での模試においても同様だ。

問題はそれにとどまらず、高校の教師たちが全面的に進学指導をベネッセに頼っていることである。自校で模擬テストを行い、進路指導の教師がそれに沿って進学指導をするという風景は全く姿を消し、教師(高校)は業者の作成したデータをそのままに生徒へ伝える単なる伝達機関へと化してる。このような実態が全国規模で行われているという現実は、高校が民間企業による利益追求の場となっていることを意味し、許されるべきことではないだろう。これはもはや公教育ではなく半官半民教育だと言っていいのではないか。公教育の縮小と解体はどんどん進んでいるように思われる。

もちろんこのような現実は、ベネッセや予備校が悪いのではなく、その責任は高校教育を受験競争のなすがままに任せてしまっている高校現場ならびにそれを推奨している教育委員会にあると言ってよい。受験を意識した教育を否定はしないが、そうであるならせめて高校が自前で受験指導も責任を持って行うべきだと考えるからである。

 


 

1.はじめに

2.学習塾の現状

3.学習塾はなぜ存在しているのか

4.民間教育産業と公教育の市場化

5.学習塾から見えてくる日本の学校

6.学習塾(民間教育産業)の存在が引き起こしている課題

7.日本の教育をよりよくするに(一つの提言)

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