杉並区立和田中学校の夜間塾問題を考える

2008-02-04

―公教育とは何か、公教育の民営化が問われている―
塾教育研究会(JKK)代表 皆倉宣之

憲法にかかわる重大な問題

昨年12月の杉並区立和田中学校(正式には父母を中心とする地域本部が主催)が特定の学習塾と提携して夜間塾を設置するとの報道は、都教委からの待ったがかかったりして世間の関心をよんでいる。
「機会均等の原則に反する」「授業料をとることは許されない」「公共の施設を特定の塾に使用させることは不当」「公教育が破壊されるのでは」「講師の経歴を誰が確認するのか」といった都教委の指摘は的を得ている。なぜならことがいずれも憲法第26条に関わる重大な問題であり、一中学校現場だけで判断できる類いのものではないからである。

経済の論理

とはいえ、塾の側に立てば何の問題もない。なぜなら、自由市場主義経済の下では塾が公立学校へ参入しても、塾側からすればことは経済の論理であり、違法行為でない限り許される範囲の問題なのである。当の塾も「公立学校との連携は今後の事業展開につながる可能性がある」と公言している。

問題の所在

とすれば、今回の問題の第一の所在は和田中ならびに杉並区教委の側にある。藤原校長は「公立学校の役目は成績下位層の生徒だけでなく、上位層の生徒をさらに伸ばすのも役目だ」と述べているが、だからといっていきなり外注化していいものでもなかろう。先ずは学校自体の努力が求められるべきであり、そこに限界があるのであれば社会・政治の問題として広く世論に訴えるべきである。このままでは公教育の放棄と見なされても仕方ないだろう。

風向きの変化

第二の問題は、ではなぜこれほどまでに容易に学校への塾の導入という考えが生じてきたのだろうか。塾と学校との関係は少し前までは犬猿の仲であった。ところが、矢継ぎ早の教育改革の掛け声や学力低下が声高に叫ばれだすと風向きが変わり、塾の存在意義が見直され協力・連携の声が上がり始めた。

加速する流れ

特に小泉内閣時に打ち出された特区制度が、公教育と民間教育との境界を取り払う役目を果たしたことは注目に値する。ここには、民間でできることは民間へというキャッチフレーズが、教育の分野には「公教育の民営化」という形で浸透する兆しが孕まれていた。今回の和田中学校の夜間塾の取り組みは、まさにこの流れの第一歩を記す画期的なものではないだろうか。公教育の民営化の流れ、少なくとも塾の学校進出は確実に加速されてゆくと思われる。

(2008年1月21日 記 / 「週刊教育資料」2008年2月4日号掲載)

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